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発達障害の受容には「波」がある
保育や療育の現場で保護者の方と接していると、「以前は前向きだったのに、急に否定的な態度になってしまった」「なかなか特性を受け入れてもらえない」と悩むことはありませんか?
保護者の方がお子さんの発達特性を受け入れ、前向きに歩み出す「受容」のプロセスは、決して一本道ではありません。今回は、障害受容の複雑な心理プロセスと、支援者が持つべき視点について解説します。
1. 感情は複雑に折り重なり、変化する
障害を持つ保護者の心理状態を分析した研究では、一般的に「ショック」「否認」「悲しみと怒り」「適応」「再起」といった段階を辿ると言われています。
しかし、これらは順番にやってくるわけではありません。
- 感情の重なり: ショック、悲しみ、怒りなどが複雑に混ざり合い、自分自身でも自分の気持ちがうまく理解できない状態になることがあります。
- 不規則なバイオリズム: 感情には波(バイオリズム)があり、その日によって状態が異なります。昨日は落ち着いていたのに、今日は悲しみが強く出るといったことが日常的に起こります。
2. 「グラデーション」だからこその難しさ
発達障害の受容が、身体障害や他の疾患と比べて特に難しいと言われる理由は、それが「グラデーション(境界線が曖昧)」だからです。
「白か黒か」がはっきり診断される疾患であれば、かえって覚悟を決めて前向きに進みやすい側面もあります。しかし発達障害は、特性が目立たない時期があったり、少し改善したように見えたりすることもあります。
そのため、「いつか良くなるのではないか」という淡い期待を捨てきれず、結果として受容が遅れたり、気持ちが激しく揺れ動いたりしやすくなるのです,。
3. ライフステージごとに訪れる「再沈下」
一度は受容し、前向きな「再起」の状態になったとしても、安心はできません。 お子さんの成長に伴い、環境が変わるタイミング(保育園から小学校、中学校への進学など)で、再び気持ちが大きく沈み込むことがあります,。
例えば、学校生活に馴染めず不登校になった際などに、「やはりこの先、普通に仕事をして生きていけるのだろうか」という不安や絶望感が再び押し寄せてくるのです。こうしたき沈みは、中学・高校と長く続いていくものだと理解しておく必要があります。
4. 保護者が直面するさまざまな葛藤
現場でよく見られる保護者の心理状態には、以下のようなケースがあります。
- 無意識の否認: 「自分の育て方のせい」という自責の念から逃れるため、あるいは「ただの個性」と楽観視することで、特性から目を逸らしてしまう。
- 認めたくない心理: 園での指摘に対し、「家ではできています」と強く否定してしまう。これは、薄々気づいているけれど認めるのが怖くて拒否感が出ているケースも多いです。
- 将来への絶望感: 特性を認めたとしても、「普通学級に行けるか」「将来結婚して自立できるか」といった、人並みの幸せを手にできるのかという不安に絶えず晒されています,。
5. 支援者が大切にすべき「スタンス」
私たちは、保護者の気持ちを100%理解することはできません,。しかし、大切なのは「理解しようとするスタンス」と「考え続けること」そのものです。
「なぜあの保護者はわかってくれないのか」と突き放すのではなく、「今はバイオリズムのどの位置にいるのだろう」「どんな不安が背景にあるのだろう」と想像力を働かせることが、信頼関係を築く第一歩となります,。
保護者の方の心には常に不安と前向きな気持ちが入り混じっていることを前提に、長いスパンで寄り添っていく姿勢を持ち続けましょう。
なお、保育の実践研修については、療育と保育の学びの会(児童発達支援事業のための研修)をご確認ください。
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