1. はじめに
近年、不登校のこどもが増加しており、その中には発達障がいを抱えるこどもも多く含まれています。特に、知能検査(WISCなど)ではIQが平均以上であるにもかかわらず、知覚推理・言語理解・処理速度・短期記憶の側面で著しい個人内差があるこどもたちは、不登校が長期化しやすい傾向があります。
こうしたこどもたちにとって、従来の学校やリアルなフリースクールでは適応が難しくなるケースが少なくありません。しかし、オンラインの学習環境を活用することで、彼らに最適な学びの場を提供できる可能性が高いのです。
本記事では、不登校×発達障がいのこどもが抱える課題と、オンライン学習の有効性について詳しく解説します。
2. 発達障がいのある不登校のこどもに見られる特徴
不登校が長期化しやすいこどもの中には、発達障がいを持つケースが一定数あります。その中でも、WISCなどの知能検査で以下のような特徴が見られるこどもは、特に適応が難しくなる傾向があります。
2-1. 知覚推理の高さと処理速度の低さのギャップ
知覚推理(視覚情報をもとにパターンを見つけたり、問題を解決する能力)が高い一方で、処理速度(作業の速さや視覚的な情報処理能力)が低いこどもは、
- 学校の授業についていくのが難しい(考え方は分かるが、回答に時間がかかる)
- 板書やプリント作業にストレスを感じる
- 周囲のペースについていけず、自己評価が下がる
といった問題を抱えやすくなります。
2-2. 言語理解のばらつきによるコミュニケーションの難しさ
言語理解能力にばらつきがあると、
- 指示を聞き取るのに時間がかかる
- 抽象的な説明や曖昧な表現が理解しにくい
- 言葉のやりとりに負担を感じやすい
といったことが起こりやすく、結果として対人関係のトラブルが増え、不登校につながることもあります。
2-3. 短期記憶の弱さによる学習の難しさ
短期記憶(ワーキングメモリ)が弱い場合、
- 授業中の内容を覚えておくのが難しい
- 一度に多くの情報を処理するのが苦手
- 課題や宿題をやろうとしても、手順を忘れてしまう
といった課題が生じ、学習に対する苦手意識が強くなります。
これらの特徴を持つこどもたちは、従来の学校教育のペースに適応しづらく、結果として不登校が長期化しやすいのです。
3. なぜオンライン支援が有効なのか?
オンライン学習環境は、不登校×発達障がいのこどもたちにとって、リアルの学校よりも適応しやすい環境を提供できる可能性があります。その理由を詳しく見ていきましょう。
3-1. 学習のペースを自由に調整できる
オンライン学習では、
- 自分のペースで進められる
- 動画教材を繰り返し視聴できる
- 苦手な部分はゆっくり、得意な部分はどんどん進められる
といった柔軟な学習スタイルが可能になります。これにより、処理速度の遅さや短期記憶の弱さによる学習のつまずきを軽減できます。
3-2. 対人関係のストレスを減らしつつ、適度な交流ができる
オンライン学習では、
- 自分の好きなタイミングで交流できる
- チャットや音声、テキストのみなど、コミュニケーションの手段を選べる
- リアルの対面よりも心理的負担が少ない
といったメリットがあります。言語理解やコミュニケーションが苦手なこどもにとって、リアルな教室のようなストレスを感じにくい環境が整います。
3-3. 環境のカスタマイズが可能
リアルな学校では、自分に合った環境を作るのは難しいですが、オンラインでは
- 余計なノイズが少なく、集中しやすい
- ツールやフォント、色などを自分に合ったものに変更できる
- 特定の人とだけ交流する設定が可能
など、環境を自由にカスタマイズできます。
3-4. 学習の負担を減らすITツールの活用
オンライン学習では、
- 読み上げ機能(視覚情報が苦手な子向け)
- 要約ツール(長文が苦手な子向け)
- 音声入力機能(書くのが苦手な子向け)
といった支援ツールを活用することで、こどもの特性に合わせた学習環境を作ることができます。
4. 具体的なオンライン支援の事例
4-1. 個別最適化されたオンライン学習
特性に応じたカリキュラムを用意し、
- AIによる学習進度の最適化
- 個別対応の授業
- 学びやすい形式(動画、音声、文字)の選択
を取り入れることで、こどもがストレスなく学習を継続できる環境を整えます。
4-2. オンラインスクール内での適度な交流
- 少人数制のグループ学習
- アバターを使ったメタバース空間での交流
- SlackやDiscordを活用した非同期コミュニケーション
などを取り入れることで、ストレスなく社会性を養う機会を提供できます。
5. まとめ
不登校×発達障がいのこどもたちにとって、従来の学校やリアルのフリースクールは適応が難しい場合があります。しかし、オンライン学習環境を活用することで、個別最適な学びの提供、ストレスの少ない交流、環境のカスタマイズが可能になり、不登校のこどもたちが自分に合ったペースで成長できる場を提供できます。
今後も、オンライン支援の可能性を探りながら、より多くのこどもたちが安心して学べる環境を整えていくことが求められています。