【2025年最新版】小中学生の不登校は日本だけじゃない?海外の不登校事情を徹底比較!

不登校議論 不登校支援

近年、日本の不登校児童生徒数が過去最多を更新し続けていることがニュースでも頻繁に取り上げられています。2023年度には34万人を超え、「不登校は特別なことではない」という認識がようやく広まりつつあります。

しかし、日本だけが不登校の課題を抱えているわけではありません。世界に目を向けてみると、アメリカ、ドイツ、韓国など、教育先進国でも不登校に似た「長期欠席」や「学業中断」の増加が報告されています。

この記事では、日本を含む4か国(日本、アメリカ、ドイツ、韓国)について、

  • 不登校の定義の違い
  • 小中学生の不登校(長期欠席)数の推移(過去10年間)
  • 不登校が増加した背景
  • 各国の対策や制度

を比較・解説します。教育関係者、保護者、フリースクール関係者、政策立案者など、子どもたちの未来に関わるすべての方に読んでいただきたい内容です。


【日本】10年連続の増加、2023年度は過去最多34万人超え

不登校の定義

文部科学省の定義によると、**「病気や経済的理由を除き、心理的・社会的要因などによって年間30日以上欠席した児童生徒」**を不登校としています。登校意欲があっても、家庭や学校との関係性、心身の不調など多様な背景が原因となります。

小中学生の不登校推移(過去10年間)

年度不登校児童生徒数
2013約12万人
2018約16万人
2022約30万人
2023約34.6万人(過去最多)

小学生の不登校は約10万人を超え、中学生は約24万人に迫っています。10年前と比べて、小学生の不登校数は約5倍、中学生は2倍以上に増加しています。

背景にある社会的要因

  • コロナ禍による生活習慣の乱れや感染への不安
  • 学校での人間関係のトラブルやいじめ
  • 学習の遅れやプレッシャー
  • 家庭環境(ネグレクト、経済的困難など)
  • 無気力・自己肯定感の低下

近年は「学校に行けない」よりも「行かない選択をした」不登校も増えており、「合わない学校に無理して通うより、自分に合った学び方を選ぶ」子どもたちも増加しています。

日本の政策的対応

  • 不登校特例校制度の創設(2023年〜)
  • オンライン学習・フリースクールとの連携
  • 教育機会確保法による「出席扱い」の柔軟化
  • 適応指導教室、家庭訪問、スクールカウンセラーの配置

日本ではまだホームスクーリング(完全在宅教育)は原則認められていないため、学校籍を持ったまま学校外で学ぶスタイルの支援が中心です。


【アメリカ】慢性的欠席が深刻化、パンデミック以降に倍増

「不登校」ではなく「慢性的欠席(Chronic Absenteeism)」

アメリカには日本のような「不登校」の概念はなく、授業日の10%以上を欠席する生徒を「慢性的欠席者」と定義しています。これは欠席理由を問わず、病気や家族都合も含めてカウントされる点で、日本と大きく異なります。

欠席率の推移

年度慢性的欠席率(K-12全体)
2018約15%
2021約30%
2022約31%
2023約28%

全米でおよそ3人に1人の児童生徒が慢性的欠席状態にあるという驚くべきデータです。

増加の背景

  • コロナ禍による休校とオンライン授業の弊害
  • メンタルヘルスの悪化
  • 学力格差の拡大
  • 学校に戻る意義を見失う生徒の増加(学習への興味喪失)

OECD調査では、15歳のアメリカ人の19%が「授業がつまらないから学校に行かない」と回答しています。

アメリカの支援策

  • 早期警告システムによるリスク生徒の把握
  • 地域ごとの登校支援プログラム
  • 学校外支援(スクールソーシャルワーカー、家庭訪問)
  • 「学校を楽しくする」ための課題解決型学習やプロジェクト学習の導入

教育省も「不登校の背景には家庭や地域格差がある」として、**学校と地域社会の連携(コミュニティ・スクール)**を推奨しています。


【ドイツ】「登校義務」の国でも長期欠席は存在する

不登校=「学校欠席問題(Schulabsentismus)」

ドイツでは「不登校」という言葉は用いず、「学校欠席問題」として定義されます。年10日以上の無断欠席が深刻なケースとされ、早期介入の対象になります。

状況と規模感

  • 毎年およそ**30万人(生徒の約8%)**が深刻な欠席状態にあると推定
  • 高校段階の中退率は約6%
  • 地域や学力別の学校制度(Hauptschuleなど)によって欠席率に差

背景にある課題

  • 学業不振による「学びづらさ」
  • 教師や友人との関係不和
  • 家庭内問題(ネグレクト、文化的背景)

低所得世帯や移民家庭の子どもは、欠席のリスクが高い傾向にあります。

ドイツの政策対応

  • ホームスクーリングは禁止
  • 無断欠席が続くと罰金・強制登校措置
  • 特別支援学校、職業教育学校、学習支援学校など多様な選択肢
  • ソーシャルワーカーの学校常駐、家庭連携の強化

厳格な「登校義務」のもとで、学校と福祉・医療の連携が進められています。


【韓国】「中退ゼロ」目指す制度と、フリースクール的選択

定義:学業中断学生

韓国では「不登校」という表現よりも、**「学業中断」や「中退予備軍」**という呼び方が一般的です。休学・退学・長期欠席など、在籍していても学校に通わない状態は教育当局の介入対象となります。

推移(初等・中等教育)

年度小学生中学生
2010約1.06%
2015約0.77%
2022約0.7%約0.7%

全体としては不登校率は低い水準に抑えられていますが、高校での中退率が高い傾向があります(約1.9%)。

背景と特徴

  • 小学生:海外留学やフリースクール志向で中断するケースが多い
  • 中高生:学校不適応や進路不安が主な理由
  • 親が意図的に代案教育(オルタナティブスクール)を選ぶ例も増加

韓国では、子どもが3日以上無断欠席すると学校や教育庁が即座に調査・支援を始める体制が整っています。

政策と制度

  • 学業中断熟慮制度」:中退希望者には熟慮期間とカウンセリング提供
  • フリースクール的な公認代案学校の設立推進
  • 通信教育やEBS(韓国教育放送公社)による学び直し支援
  • 再入学制度の整備

「中退ゼロ」を掲げる教育政策によって、在籍中の早期対応と学校外学習への導線の整備が進められています。


世界的に不登校は「増えている」:今後求められること

日本では「学校に行けない」ことが課題とされがちですが、海外ではすでに「どう学び直すか」「学校に行かなくても学べる選択肢をどう整えるか」という議論が主流になりつつあります。

共通の課題

  • パンデミックによる欠席増加
  • メンタルヘルスやモチベーションの低下
  • 教育システムの画一性・選択肢の乏しさ

各国の共通キーワード

  • 早期発見・早期支援
  • 個別化された学びの提供
  • 地域と学校の連携
  • 生徒のエンゲージメント(学びへの愛着)を高める教育

最後に:日本でも選べる「多様な学びの場」が必要です

日本でも、オンラインフリースクールやメタバース教室、マイクラやAIを活用した「新しい学びのスタイル」が登場しています。大切なのは、子どもが安心して、自分らしく学べる環境を見つけること。

不登校は、決して「問題行動」ではなく、今の教育とのミスマッチからくるサイン。学校に戻すことを目的にするのではなく、こども自身が前向きに生きられる道を見つけることが社会全体に求められています。